顧問向け
公開日 更新日

役職定年のその後にある4つの選択肢

役職を外れ、その後のキャリアをどう考えるか迷っている方に向けた記事です。役職定年という制度の実態と、年収や仕事への意欲に何が起きているのかを公的な調査から整理します。そのうえで、社内に残る道から社外で顧問として関わる道まで、選べる選択肢を並べて比べます。

役職定年とは何か、制度としての実態

役職定年とは、部長や課長などの役職者が一定の年齢に達したときに、ラインの管理職ポストを外れて専門職などに移る人事制度です。定年そのものとは別の仕組みで、多くの場合は定年を迎える数年前に訪れます。組織のポストを次の世代に移すことを目的として設けられており、本人の成績や評価とは切り離して運用されるのが特徴です。

人事院の令和5年民間企業の勤務条件制度等調査によると、事務・技術関係職種の従業員がいる企業のうち、役職定年制がある企業の割合は16.7%です。制度を持つ企業のうち95.3%が今後も継続すると回答しており、当面なくなる見込みの薄い仕組みだと言えます。定年年齢が61歳以上の企業に限ると、役職定年制がある企業の割合は20.8%とやや高くなります。

同じ調査では、役職定年年齢は部長級・課長級ともに55歳とする企業が最も多く、部長級で33.5%、課長級で40.3%となっています。次いで多いのが60歳で、部長級で19.6%、課長級で19.2%です。定年年齢が61歳以上の企業に絞ると、部長級の64.4%、課長級の62.8%が60歳を役職定年年齢としており、定年が延びるほど役職定年も後ろにずれる傾向が見て取れます。

役職定年後の配置先は、部長級・課長級ともに同格のスタッフ職とする企業が最も多く、部長級で42.1%、課長級で40.6%です。次いで格下のスタッフ職が多く、部長級で34.4%、課長級で36.0%となっています。つまり、多くの場合は会社に残りつつ、決裁の権限を持たない立場へ移ることになります。ここまでの数字が示しているのは、役職定年が個人の努力や成果とは別の軸で動く仕組みだということです。社内で頑張り方を変えても制度そのものは変わらないため、その後をどう組み立てるかは制度の外側に目を向けて考える必要があります。

その後の年収と意欲に何が起きているか

公益財団法人ダイヤ高齢社会研究財団が2018年に公表した50代・60代の働き方に関する調査では、定年後も働いている60代前半の男性1,000人のうち、40.5%が役職定年を経験していました。この調査は全国の50歳から69歳の男女6,250人を対象にしたもので、役職定年を経験した方にその後の年収と仕事への意欲を尋ねています。結果として、役職定年で年収が下がった方は9割以上にのぼり、現状維持以上は1割弱にとどまりました。年収水準は役職定年前の50%から75%が最も多いものの、全体の4割が50%を下回っています。

役職定年後の年収水準割合
25%未満7.7%
25%以上50%未満31.1%
50%以上75%未満32.6%
75%以上100%未満21.7%
100%(変わらない)5.9%
100%超1.0%
役職定年後の年収水準(役職定年前を100%とした割合。60歳から64歳の男性405人)

賃金の水準そのものも、この年代を境に下がっていきます。厚生労働省の令和7年賃金構造基本統計調査では、男性の所定内給与額は55歳から59歳の44万5,600円がピークで、60歳から64歳では35万8,500円、65歳から69歳では30万4,300円となっています。これは年齢階級ごとの平均であり、同じ方の給与の推移を追ったものではありませんが、50代後半を境に水準が下がる形がはっきり表れています。

意欲の面も見ておきましょう。ダイヤ高齢社会研究財団の同じ調査では、年収が下がった方の6割前後が仕事へのモチベーションも下がったと答えています。注目したいのは、年収が変わらなかった方でも4人に1人にモチベーションの低下が見られた点です。報告書は、管理職としての肩書きがなくなるという現実を、年収以外の要因として挙げています。

さらに、同じ調査で役職定年の際の所属異動を尋ねた設問では、約7割が異動はなかったと答えています。席も同僚も変わらないまま、役割と年収だけが変わるということです。周囲から見れば昨日までと同じ場所にいるため、変化を言葉にしにくく、一人で抱えやすい状況が生まれます。

役職定年その後にある4つの選択肢

その後の進み方は、大きく4つに分かれます。どれが良いかを決める前に、それぞれで契約の形と役割の決まり方がどう違うのかを並べて見ておくと、判断の軸が定まります。

選択肢契約の形役割の決まり方
社内に残る雇用(同じ会社のまま)会社の人事制度が決める
定年後に再雇用される雇用(継続雇用の制度による)会社が用意した枠のなかで決まる
他社へ転職する雇用(新しい会社と)採用時の条件として決まる
業務委託で顧問として関わる業務委託(複数社とも結べる)企業と話し合って決める
役職定年その後に選べる主な道

社内に残る道は、環境が変わらない安心感があります。一方で、上の表のとおり役割を決めるのは会社の人事制度であり、年収も配置も自分の交渉で動かせる部分は限られます。これまで培ってきた判断力をどこで使うかを、自分では選びにくい立場になります。

定年後の再雇用も、多くの方が通る道です。厚生労働省の令和7年高年齢者雇用状況等報告によると、65歳までの雇用確保措置は99.9%の企業が実施済みで、そのうち65.1%が継続雇用制度によるものです。65歳以上定年の企業(定年制の廃止企業を含む)は34.9%で、70歳までの就業確保措置を実施済みの企業は34.8%となっています。働ける年数は延びていますが、与えられる役割は会社が用意した枠のなかで決まります。

他社への転職は、役割を選び直せる道です。ただし雇用である以上、任される範囲は採用時の条件として決まり、組織の一員として動くことに変わりはありません。これまで決裁側にいた方ほど、権限の持ち方が変わることを事前に確かめておく必要があります。

4つ目が業務委託です。高年齢者雇用安定法は、70歳までの就業確保措置の選択肢として、定年の引上げや継続雇用制度の導入と並んで、70歳まで継続的に業務委託契約を締結する制度の導入を挙げています(令和3年4月1日施行)。ただし同じ報告によると、この創業支援等措置を導入している企業は0.1%(132社)にとどまります。社内に業務委託の受け皿を期待するのは現実的ではなく、この道は社外に自分で作るものだと捉えたほうが確かです。

社外で請われる立場になるという道

顧問は、企業と業務委託契約を結び、これまでの実務で培った知見と人脈を提供する立場です。雇用ではないため、どの企業とどこまで関わるかを自分で決められます。役職を外れた社内では権限が縮んでいく一方で、社外では企業のほうから力を貸してほしいと請われる関係が成り立ちます。この立場の違いが、役職定年その後の景色を大きく変えます。

特に営業を強化したい企業にとって、決裁者クラスとのつながりや、商談を前に進めてきた経験は、社内では簡単に補えないものです。求められる経歴は営業部門に限りません。購買や経営、事業開発などで決裁に関わってきた経験は、相手企業のどの役職者にどう届けばよいかを見極める力につながります。役職定年で手放したように見える資産は、社外ではそのまま価値として扱われます。

  • 役員や決裁者クラスとの人脈と、その相手への届き方の勘所
  • 商談や交渉を前に進め、成約まで運んできた実務経験
  • 組織を動かし、人を育ててきたマネジメントの経験
  • 業界の構造や、意思決定がどう進むかに対する理解

商談のために足を運ぶことをいとわない方であれば、活躍の場はさらに広がります。現場で相手の反応を見ながら次の一手を考えられることは、長い実務のなかで自然に身につけてきた強みだからです。若手だけでは踏み込みにくい相手にも、経験を重ねてきた方であれば落ち着いて向き合えます。その落ち着きと判断力は、55歳前後という年齢だからこそ提供できる価値です。

在職中から準備できること

会社を辞めてから考え始める必要はありません。役職定年を迎えた時点、あるいは迎える前から、社外で通用する形に自分の経験を整えておくことができます。順序としては次のようになります。

  1. これまでの実務経験と人脈を棚卸しし、提供できる価値を言葉にする
  2. どの業界のどんな課題に力を出せるのかを、具体的に絞り込む
  3. どの企業のどの役職者に、自分の名前で届くのかを整理する
  4. 顧問を探す企業とつながる場に、プロフィールを登録する
  5. 届いた相談ごとに、関われる範囲と条件をすり合わせる

棚卸しで大切なのは、経験があるという伝え方で止めないことです。過去にどの役職者と、どんな課題をどう動かしたのか。具体的な場面として語れるほど、相手企業は自社の状況に重ねてイメージできます。肩書きの大きさより、相手が今ぶつかっている壁との重なりが響きます。

顧問ダイレクトは、経験と人脈を持つ営業顧問と、営業を強化したい企業を直接つなぐマッチングサービスです。プロフィールを登録しておくと、条件に合う企業からオファーが届きます。役職定年その後にどんな企業から求められるのかは、実際のオファーに触れながら確かめていくのが確実です。今の会社に在籍したまま登録し、どんな声がかかるかを見てから決めることもできます。

顧問という道に向いている方・向いていない方

業務委託を中心とする顧問は、誰にでも同じように向くわけではありません。先に向き不向きを知っておくと、始めてからのずれを避けられます。

  • 自分の判断で動くことを楽しめ、経営者と対等に議論できる方は、この立場で力を発揮できます。
  • 特定の業界で決裁者クラスと深くつながっている方は、その一点だけでも企業から求められます。
  • 商談のために現場へ足を運ぶことをいとわない方は、企業が期待する一貫した支援とかみ合います。
  • 組織を率いてきた方は、顧問先の若手に判断の基準を伝える役割でも価値を出せます。

一方で、決められた役割のなかで安定して働きたい方には、成果と責任を自分で負う業務委託は負担に感じられることがあります。過去の役職の肩書きだけで価値を示そうとする方や、商談に足を運ぶ意思がない方には、企業が期待する関わりとかみ合いにくくなります。収入が安定するまでに時間がかかる点も、始める前に見ておきたい部分です。

迷ったら、いきなり所属を変えるのではなく、まず一社の小さな関わりから始めて手応えを確かめるとよいでしょう。役職定年その後の時間は、まだ十分に長く残っています。

よくあるご質問

役職定年は何歳からですか。

人事院の令和5年民間企業の勤務条件制度等調査では、役職定年年齢は部長級・課長級ともに55歳とする企業が最も多く、部長級で33.5%、課長級で40.3%です。次いで60歳が多く、部長級で19.6%、課長級で19.2%となっています。定年年齢が61歳以上の企業では60歳が最も多く、部長級で64.4%、課長級で62.8%です。

役職定年で給料はどれくらい下がりますか。

ダイヤ高齢社会研究財団の50代・60代の働き方に関する調査では、役職定年で年収が下がった方は9割以上にのぼり、現状維持以上は1割弱でした。年収水準は役職定年前の50%から75%が最も多く、全体の4割が50%を下回っています。下がり幅は企業の制度や役職によって異なります。

役職定年は拒否できますか。

役職定年は就業規則などで定められた人事制度であり、本人の希望で対象から外れられるかは会社の制度によります。人事院の調査では、役職定年制がある企業の95.3%が今後も継続すると回答しており、制度として運用が定着している実態があります。個別の取り扱いは自社の就業規則を確認するのが確実です。

役職定年その後、モチベーションはどう保てばよいですか。

ダイヤ高齢社会研究財団の調査では、年収が変わらなかった方でも4人に1人にモチベーションの低下が見られました。報告書は肩書きがなくなること自体を要因として挙げています。したがって金額を補うだけでは戻りにくく、判断を任される役割を社内外のどこかで持ち直すことが要点になります。社外で顧問として関わる道は、その具体的な選択肢の一つです。

役職定年を機にすぐ会社を辞めるべきですか。

その必要はありません。在職したまま経験と人脈を棚卸しし、顧問を探す企業とつながる場に登録して、どんな声がかかるかを確かめてから判断できます。社外からどう評価されるかを知ってから決めるほうが、選択肢を狭めずに済みます。

関連記事