顧問向け
公開日 更新日

早期退職その後の現実と働き方の選択肢

早期退職に応募するか迷っている方、すでに退職を決めた方に向けた記事です。上場企業の募集がどれだけの規模で起きているのかと、退職後のお金で最初に確かめる点を、公的な調査と民間の調査から整理します。そのうえで、再就職・独立・業務委託という3つの選択肢を並べ、これまでの経験と人脈を社外でどう活かせるかを解説します。

早期退職の募集にいま何が起きているか

東京商工リサーチの集計によると、2025年に早期・希望退職の募集が判明した上場企業は43社で、募集人数は1万7,875人でした。前年の57社から社数は減った一方、人数は78.5%増えています。この1万7,875人という規模は、東日本大震災のあった2012年の1万7,705人を上回り、2009年以降で3番目の高い水準にあたります。1社あたりの募集が大型化していることが、直近の特徴です。

もう一つの特徴が、業績が悪いから募集するという構図ではなくなっている点です。同じ集計では、募集した43社のうち黒字企業が29社(構成比67.4%)を占め、募集人数で見ると黒字企業が1万5,205人と全体の85.0%にのぼりました。市場区分では東証プライムが33社で、人数では96.4%を占めています。業種では電気機器が18社と全体の4割を超えました。大企業が、利益を出しながら人員構成を組み替えているということです。

対象年齢は制度によって異なりますが、2025年は中高年を対象とした実施が加速したと同社は指摘しており、応募条件を50歳以上とする募集が見られました。40代後半から50代にかけて、本人の評価とは別の理由で選択を迫られる場面が現実に増えています。

ただし、これがすべての企業で起きているわけではありません。東京商工リサーチが2025年6月に6,483社から回答を得たアンケートでは、直近3年間に早期・希望退職を実施した企業は全体の0.9%で、98.5%は実施しておらず今後1年の実施も検討していないと答えています。実施率は大企業で2.8%、中小企業で0.7%と4倍の開きがありました。募集は大企業に集中している現象だと捉えておくと、退職後に向き合う相手企業の顔ぶれも見えてきます。

その後のお金で最初に確かめること

早期退職の募集に応じた場合、通常の退職より上乗せされた退職金を受け取れることが一般的です。厚生労働省の令和5年就労条件総合調査では、勤続20年以上かつ45歳以上の退職者について、退職事由別の1人平均退職給付額が公表されています。この調査では、どの学歴においても早期優遇による退職の給付額が最も高くなっています。

退職事由大学・大学院卒(管理・事務・技術職)高校卒(管理・事務・技術職)
定年1,896万円1,682万円
会社都合1,738万円1,385万円
自己都合1,441万円1,280万円
早期優遇2,266万円2,432万円
退職事由別の退職者1人平均退職給付額(勤続20年以上かつ45歳以上の退職者。令和4年の1年間)

この金額は割増分だけを取り出したものではなく、退職一時金と年金現価額を合わせた給付の総額です。大学・大学院卒(管理・事務・技術職)の早期優遇は、退職時の所定内賃金に換算すると39.9か月分にあたります。実際にいくら上乗せされるかは各社の制度で決まるため、自社の規程で確認するのが確実です。なお同じ調査では、勤続20年以上かつ45歳以上の退職者のうち早期優遇にあたる方は5.7%で、従業員1,000人以上の企業では8.6%となっています。

次に確かめたいのが雇用保険です。ハローワークインターネットサービスによると、基本手当の所定給付日数は離職の理由によって変わります。特定受給資格者などにあたる場合、45歳以上60歳未満で被保険者期間20年以上なら330日ですが、一般の離職者は被保険者期間が20年以上でも150日です。ここで注意したいのが、特定受給資格者の範囲を定めた記載に、従来から恒常的に設けられている早期退職優遇制度等に応募して離職した場合は退職勧奨に該当しないと明記されている点です。自分の離職がどちらの区分になるかは離職票の記載とハローワークでの確認が必要になります。

まとまった額を受け取ると当面の生活は成り立ちますが、収入のない期間が長引くほど取り崩しは進みます。資産をどう配分するかは専門家に相談するとして、働き方の面で押さえるべき論点は一つです。次の収入源をいつ持つかで、手元の資金が持つ年数は大きく変わります。だからこそ、退職前後のなるべく早い時期に、次の役割の目星をつけておく価値があります。

その後の働き方、3つの選択肢

退職後の進み方は、大きく3つに分かれます。どれを選ぶかの前に、契約の形と役割の決まり方がどう違うのかを並べて見ておくと、判断の軸が定まります。なお、役職を外れたまま社内に残る道も含めた比較は、役職定年その後の選択肢を扱った記事で整理しています。

働き方契約の形役割の決まり方
他社へ再就職する雇用(1社と結ぶ)採用時の条件として決まる
独立して事業を興す自分の会社または個人事業自分で決めるが顧客を一から作る
顧問として業務委託で関わる業務委託(複数社とも結べる)企業と話し合って決める
早期退職その後に選べる主な働き方

まず再就職です。厚生労働省の令和6年雇用動向調査では、転職して入職した方の賃金が前職と比べてどう変わったかが年齢階級別に集計されています。この数字を見ると、50代の前半と後半で条件がはっきり変わることが分かります。

年齢階級増加変わらない減少
45歳から49歳46.4%26.9%23.8%
50歳から54歳39.0%31.7%28.2%
55歳から59歳27.4%33.6%36.6%
60歳から64歳13.6%24.2%60.9%
転職入職者の賃金変動状況(令和6年の1年間。年齢階級別)

50歳から54歳では増加が39.0%と減少の28.2%を上回りますが、55歳から59歳では減少が36.6%と増加の27.4%を上回り、差し引きで9.2ポイントの逆転が起きます。しかも55歳から59歳の減少のうち、1割以上の減少が30.7%を占めています。60歳から64歳になると減少が60.9%で、1割以上の減少だけで53.9%です。同じ調査では、男性の転職入職率は50歳から54歳が5.1%、55歳から59歳が5.4%で、そもそも動く方の割合自体が20代の3分の1程度にとどまります。

この数字が示しているのは、雇用という形で役割を得ようとすると、これまでの経歴がそのまま条件に反映されにくくなるということです。組織の等級や賃金表という枠に当てはめる以上、前職の役職や年収をそのまま持ち込むことは難しくなります。

次に独立です。自分の会社を立ち上げれば、何をどこまでやるかは自分で決められます。一方で、顧客を一から作り、案件が途切れないように営業を続ける仕事が新たに加わります。長く事業の中枢にいた方ほど、実務の中身よりも顧客開拓の負荷が想定を超えることがあります。

3つ目が業務委託で顧問として関わる道です。企業と業務委託契約を結び、これまでの実務で培った知見と人脈を提供します。雇用ではないため、どの企業とどこまで関わるかを話し合って決められますし、複数の企業と並行して契約することもできます。顧客を一から作る独立と違い、企業側から声がかかる形で関係が始まる点が、退職直後の立ち上がりでは大きな違いになります。

大手企業で培った経験と人脈が社外で求められる理由

成長を目指す中堅・中小企業にとって、狙った企業の決裁者に届く経路を社内で作ることは簡単ではありません。製品も価格も整っているのに、話を聞いてもらう相手にたどり着けないという状態が長く続きます。ここを埋められるのが、大企業で長く決裁の側にいた方の経験です。

  • 役員や決裁者クラスとのつながりと、その相手にどう届けば話が進むかという勘所
  • 商談や交渉を前に進め、成約まで運んできた実務経験
  • 組織を動かし、人を育ててきたマネジメントの経験
  • 業界の構造と、相手企業の意思決定がどの順番で進むかについての理解

求められる経歴は営業部門に限りません。購買や経営企画、事業開発などで決裁に関わってきた経験は、相手企業のどの役職者にどう話を持ち込めばよいかを見極める力につながります。むしろ、買う側として提案を受けてきた経験があるほど、通る提案と通らない提案の差を具体的に語れます。早期退職で手放したように見える資産は、社外ではそのまま価値として扱われます。

顧問という働き方と、退職前から始める準備

顧問として関わり始めるのに、退職を待つ必要はありません。募集への応募を検討している段階、あるいは退職日が決まった段階から、社外で通用する形に自分の経験を整えておくことができます。収入が途切れる前に企業との接点を作っておけるかどうかで、退職後の数か月の過ごし方は変わります。

  1. これまでの実務経験を、どんな課題をどう動かしたのかという具体的な場面として書き出す
  2. つながりのある企業を、企業名・部署・役職者の階層で整理する
  3. どの業界のどんな課題であれば力を出せるのかを絞り込む
  4. 顧問を探す企業とつながる場に、プロフィールを登録する
  5. 届いた相談ごとに、関われる範囲と稼働、報酬の条件をすり合わせる

整理で大切なのは、経験があるという伝え方で止めないことです。過去にどの役職者と、どんな課題をどう動かしたのか。具体的な場面として語れるほど、相手企業は自社の状況に重ねてイメージできます。肩書きの大きさより、相手が今ぶつかっている壁との重なりが響きます。

顧問ダイレクトは、経験と人脈を持つ営業顧問と、営業を強化したい企業を直接つなぐマッチングサービスです。プロフィールを登録しておくと、条件に合う企業からオファーが届きます。早期退職その後にどんな企業から求められるのかは、実際に届くオファーに触れながら確かめていくのが確実です。在籍したまま登録し、どんな声がかかるかを見てから応募の可否を決めることもできます。

顧問という道に向いている方・向いていない方

業務委託を中心とする顧問は、誰にでも同じように向くわけではありません。先に向き不向きを知っておくと、始めてからのずれを避けられます。

  • 自分の判断で動くことを楽しめ、経営者と対等に議論できる方は、この立場で力を発揮できます。
  • 特定の業界で決裁者クラスと深くつながっている方は、その一点だけでも企業から求められます。
  • 商談のために現場へ足を運ぶことをいとわない方は、企業が期待する一貫した支援とかみ合います。
  • 組織を率いてきた方は、顧問先の若手に判断の基準を伝える役割でも価値を出せます。

一方で、決められた役割のなかで安定して働きたい方には、成果と責任を自分で負う業務委託は負担に感じられることがあります。過去の役職の肩書きだけで価値を示そうとする方や、商談に足を運ぶ意思がない方には、企業が期待する関わりとかみ合いにくくなります。契約が積み上がるまでに時間がかかる点も、始める前に見ておきたい部分です。その間の生活を支える意味でも、退職金を受け取った直後に動き出せるかどうかが効いてきます。

後悔とどう向き合うか

早期退職を選んだ後に後悔が語られるとき、その中身は2つに分かれます。金額の話と、役割の話です。金額については、退職給付額の水準も、基本手当の日数も、ここまで見てきたとおり制度と統計である程度は見通せます。見通せる部分は数字で確かめれば、漠然とした不安のままにしておく必要はありません。

重いのはもう一方、役割の話です。決裁を任され、事業を動かしていた立場が手元から離れると、時間が空いた分だけ空白が意識されます。この空白が長引くほど、当時の判断そのものを何度も振り返ることになります。逆に言えば、次に引き受ける役割が決まると、同じ決断の見え方が変わります。

応募するかどうかの判断も、受け取った退職金の額も、すでに確定した事実です。いま動かせるのは、次に何を引き受けるかという一点だけです。50代で退職した方には、これから20年近い働ける時間が残っています。その時間をどの役割で使うかを決めることが、後悔と向き合う最も確かな方法になります。

よくあるご質問

早期退職は何歳から対象になりますか。

対象年齢は各社の制度で決まるため一律ではありません。東京商工リサーチは2025年の特徴として中高年を対象とした実施の加速を挙げており、応募条件を50歳以上とする募集が見られました。厚生労働省の令和5年就労条件総合調査でも、早期優遇による退職は勤続20年以上かつ45歳以上の退職者の5.7%を占めています。

早期退職の割増退職金の相場はどれくらいですか。

厚生労働省の令和5年就労条件総合調査では、勤続20年以上かつ45歳以上の退職者について、早期優遇による退職給付額がどの学歴でも最も高くなっています。大学・大学院卒(管理・事務・技術職)で2,266万円、定年退職の1,896万円を上回ります。ただしこれは退職一時金と年金現価額を合わせた総額で、割増分だけの金額ではありません。上乗せの水準は各社の規程で異なります。

早期退職その後の再就職は厳しいですか。

年齢によって条件が変わります。厚生労働省の令和6年雇用動向調査では、転職して入職した方のうち賃金が増加した割合は50歳から54歳で39.0%と減少の28.2%を上回りますが、55歳から59歳では減少が36.6%で増加の27.4%を上回ります。1割以上減少した方が30.7%を占めるため、雇用という形にこだわらず、業務委託で顧問として関わる道を並行して検討する価値があります。

退職前にやっておくべき準備は何ですか。

実務経験を具体的な場面として書き出すこと、つながりのある企業を企業名・部署・役職者の階層で整理すること、顧問を探す企業とつながる場にプロフィールを登録して実際に届くオファーを確かめることの3つです。在籍したまま登録できるため、社外からどう評価されるかを見てから応募の可否を決められます。あわせて、自社の退職金規程と離職理由の扱いも確認しておくと判断がぶれません。

早期退職に応募すると失業給付はどうなりますか。

基本手当の所定給付日数は離職の理由によって変わります。ハローワークインターネットサービスによると、特定受給資格者などにあたる場合は45歳以上60歳未満で被保険者期間20年以上なら330日ですが、一般の離職者は150日です。特定受給資格者の範囲には、従来から恒常的に設けられている早期退職優遇制度等に応募して離職した場合は退職勧奨に該当しないと明記されているため、自分がどちらの区分になるかはハローワークで確認してください。

関連記事