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定年後に経験を活かす仕事の全体像

定年後に経験を活かす仕事は、今の会社での雇用継続、他社への再就職、資格を取っての独立、業務委託の4つに大きく分かれます。大手・中堅企業で意思決定に関わってきた方を想定して、この4つを公的な調査の数値で並べ、これまでの経験がどう扱われるのかを比べます。そのうえで、経験そのものが評価の対象になる働き方と、その始め方までを整理します。

定年後に経験を活かす仕事は4つに分かれます

定年後の仕事を探すとき、求人サイトを開くところから始める方が多いのですが、その前に選択肢の全体を並べておくと判断がぶれません。定年後の働き方は、契約の形で見ると大きく4つに分かれます。今の会社で雇用を続ける道、他社へ再就職する道、資格を取って新しい看板を掲げる道、そして業務委託で企業と契約する道です。それぞれで、これまでの経験がどう扱われるかが変わります。

区分契約の形これまでの経験の扱われ方
今の会社で雇用を続ける雇用(自社の制度による)会社が用意した枠のなかで決まる
他社へ再就職する雇用(新しい会社と)採用時の条件として決まる
資格を取って独立する業務委託(資格を看板にする)資格と実績の両方を求められる
顧問として業務委託で関わる業務委託(複数社とも結べる)経験と人脈がそのまま評価の対象になる
定年後に選べる仕事の4区分

この4つに、実際に名前の挙がる仕事を当てはめると次のようになります。募集で使われる呼び名はさまざまですが、契約の形で見れば必ずどれかに収まります。自分が探しているものがどの区分にあるのかを先に決めておくと、情報の集め方が絞れます。

  • 今の会社で雇用を続ける: 再雇用や勤務延長で、これまでの職場に残る
  • 他社へ再就職する: 同業他社への転職、中小企業の管理職やアドバイザー職、マンション管理員や施設管理など経験を求める職種
  • 資格を取って独立する: 中小企業診断士や社会保険労務士などの士業、研修講師やキャリアコンサルタント
  • 顧問として業務委託で関わる: 営業顧問や経営顧問として、複数の企業の事業課題に関わる

まず、雇用を続ける道の実態から見ていきます。厚生労働省の令和7年高年齢者雇用状況等報告によると、常時雇用する労働者が21人以上の企業237,739社のうち、65歳までの雇用確保措置を実施済みの企業は99.9%です。その内訳は、継続雇用制度の導入が65.1%、定年の引上げが31.0%、定年制の廃止が3.9%となっています。65歳までは、ほぼすべての企業に働き続ける仕組みが用意されているということです。

その先は様相が変わります。同じ報告では、70歳までの就業確保措置を実施済みの企業は34.8%、65歳以上定年の企業(定年制の廃止企業を含む)は34.9%にとどまります。65歳を境に、会社が用意してくれる枠は3社に1社ほどに減る計算です。さらに、高年齢者雇用安定法は70歳までの就業確保措置の選択肢として、70歳まで継続的に業務委託契約を締結する制度の導入を挙げていますが、この創業支援等措置を導入している企業は132社、報告した企業全体の0.1%です。業務委託の受け皿が社内にできるのを待つ形にはなっておらず、この道は社外に自分で作るものだと捉えたほうが確かです。

定年後の再就職では年齢がどう扱われるか

他社への再就職は、役割を選び直せる道です。ただし雇用という枠組みで動く以上、年齢によって条件の傾向が大きく変わります。内閣府の令和7年版高齢社会白書によると、役員を除く雇用者に占める非正規の職員・従業員の比率は、男性の場合55歳から59歳で10.3%であるのに対し、60歳から64歳で41.3%、65歳から69歳で67.8%と、60歳を境に大幅に上昇します。

年齢層非正規の職員・従業員の比率
55〜59歳10.3%
60〜64歳41.3%
65〜69歳67.8%
男性の非正規の職員・従業員の比率(役員を除く雇用者に占める割合。令和7年版高齢社会白書)

契約の形が変わることは、辞め方にも表れます。厚生労働省の令和6年雇用動向調査は、離職者の離職理由を年齢階級別に集計しています。男性では、60歳から64歳で定年による離職が35.1%を占めます。65歳以上になると定年による離職は11.0%まで下がり、代わって契約期間の満了による離職が38.9%と大きな比重を占めます。期間の定めのある契約を更新しながら働く形が、この年代では珍しくないということです。

これらの数字が示しているのは、雇用という枠組みのなかでは、どれだけ重い意思決定に関わってきたかよりも、年齢と用意された枠が先に効いてくるということです。部門を率いて予算と人を動かしてきた方であっても、募集の条件が最初から決まっていれば、その経験を持ち込める余地は限られます。経験そのものを正面から評価してもらいたい場合は、雇用とは別の入口を探すことになります。

定年後に資格を取れば道は開けるのか

そこで多くの方が検討するのが資格です。定年後に向けて資格を取り、専門家として独立する道は、書店にもインターネットにも情報があふれています。経営に関する国家資格の代表である中小企業診断士を例に、この道の実態を数字で見ておきます。

日本中小企業診断士協会連合会が公表した令和7年度の統計資料によると、第1次試験は申込者26,211人に対して合格者4,344人、合格率は23.7%でした。第2次試験は筆記試験の受験者7,044人に対して合格者1,240人、合格率は17.6%です。この両方を通過する必要があるため、働きながら目指す場合はまとまった準備期間を見込むことになります。第1次試験の申込者のうち23.6%が50代、7.2%が60代を占めており、この年代の挑戦は珍しくありません。

同連合会が令和8年5月に公表した中小企業診断士活動状況アンケート調査(令和7年11月時点、回答1,847名)では、資格取得の動機として「定年後に資格を活用したいと思ったから」を挙げた方が26.9%にのぼります。4人に1人以上が、定年後を見据えて資格に取り組んでいるということです。一方、資格取得時に勤務先や関係先からどう評価されたかを尋ねた設問では、「勤務先、関係先からの評価・処遇に変化はなかった」が35.5%で最も多い回答でした。

取得後の活動状況も同じ調査で分かります。コンサルティング業務を行っていないと答えた方にその理由を尋ねると、「機会がないから」が53.8%で最多でした。また、独立しておらず予定もないと答えた方の理由は、「現在に比べ、収入が低下すると見込まれるから」18.8%、「収入が安定しないから」18.5%、「受注機会の確保が難しいと思うから」17.9%と続きます。踏みとどまる理由の中心は、試験の難しさではなく仕事の入口の見通しにあります。

では、実際に仕事はどこから来ているのでしょうか。同じ調査で、コンサルティング業務の依頼を受けたきっかけを1位から3位まで挙げてもらった結果では、1位の回答として最も多いのが「中小企業支援機関・商工団体等からの紹介」20.1%、次いで「県協会からの紹介」15.9%です。2位・3位では他の中小企業診断士からの紹介が増え、報告書自体が、仕事の獲得にあたっては人的ネットワークの構築が重要だと結論づけています。

定年後に経験そのものが評価される働き方

4つ目の道が、業務委託で企業と契約し、これまでの実務で培った知見と人脈を提供する働き方です。顧問やアドバイザーと呼ばれる立場がこれにあたります。雇用ではないため、どの企業とどこまで関わるかを自分で決められますし、複数社と同時に契約することもできます。先ほどの中小企業診断士活動状況アンケート調査でも、民間企業向けの業務が売上の中心だと答えた方の53.5%が顧問契約を結んでおり、顧問先は平均6.2社、1か月あたり平均4.6日出向いています。複数の企業に継続して関わる形が、実務として成り立っていることが分かります。

この道では、募集の条件が先に決まっているという構図が変わります。企業は、自社に足りない力を名指しで探しているからです。特に営業を強化したい企業にとって、決裁者クラスとのつながりや、商談を前に進めてきた経験は、社内で育てて補うには時間がかかるものです。だからこそ、企業のほうから力を貸してほしいと請われる関係が成り立ちます。

意思決定の経験は何に使われるか

大手・中堅企業で意思決定に関わってきた方の経験は、支援先の企業で具体的に次のような場面に使われます。求められる経歴は営業部門に限りません。購買や経営、事業開発などで決裁に関わってきた経験は、相手企業のどの役職者にどう届けばよいかを見極める力につながります。

  • 役員や決裁者クラスとの人脈と、その相手に届く筋道の見極め
  • 商談や交渉を前に進め、成約まで運んできた実務経験
  • 組織を動かし、人を育ててきたマネジメントの経験
  • 業界の構造と、相手企業のなかで意思決定がどう進むかに対する理解

商談のために足を運ぶことをいとわない方であれば、活躍の場はさらに広がります。現場で相手の反応を見ながら次の一手を考えられることは、長い実務のなかで身につけてきた強みだからです。若手だけでは踏み込みにくい相手にも、経験を重ねてきた方であれば落ち着いて向き合えます。その落ち着きと判断力は、定年前後の年齢だからこそ提供できる価値です。

定年後に経験を活かす仕事の始め方

始め方の順序は次のようになります。在職中から進められるので、会社を離れてから考え始める必要はありません。

  1. これまでの実務経験と人脈を棚卸しし、提供できる価値を言葉にする
  2. どの業界のどんな課題に力を出せるのかを、具体的に絞り込む
  3. どの企業のどの役職者に、自分の名前で届くのかを整理する
  4. 顧問を探す企業とつながる場に、プロフィールを登録する
  5. 届いた相談ごとに、関われる範囲と条件をすり合わせる

棚卸しで大切なのは、経験があるという伝え方で止めないことです。過去にどの役職者と、どんな課題をどう動かしたのか。具体的な場面として語れるほど、相手企業は自社の状況に重ねてイメージできます。肩書きの大きさより、相手が今ぶつかっている壁との重なりが響きます。

顧問ダイレクトは、経験と人脈を持つ営業顧問と、営業を強化したい企業を直接つなぐマッチングサービスです。プロフィールを登録しておくと、条件に合う企業からオファーが届きます。定年後に自分の経験がどんな企業から求められるのかは、実際のオファーに触れながら確かめていくのが確実です。今の会社に在籍したまま登録し、どんな声がかかるかを見てから決めることもできます。

この働き方に向いている方・向いていない方

業務委託を中心とする働き方は、誰にでも同じように向くわけではありません。先に向き不向きを知っておくと、始めてからのずれを避けられます。

  • 自分の判断で動くことを楽しめ、経営者と対等に議論できる方は、この立場で力を発揮できます。
  • 特定の業界で決裁者クラスと深くつながっている方は、その一点だけでも企業から求められます。
  • 商談のために現場へ足を運ぶことをいとわない方は、企業が期待する一貫した支援とかみ合います。
  • 組織を率いてきた方は、支援先の若手に判断の基準を伝える役割でも価値を出せます。

一方で、決められた役割のなかで安定して働きたい方には、成果と責任を自分で負う業務委託は負担に感じられることがあります。過去の役職の肩書きだけで価値を示そうとする方や、商談に足を運ぶ意思がない方には、企業が期待する関わりとかみ合いにくくなります。収入が安定するまでに時間がかかる点も、始める前に見ておきたい部分です。4つの道はどれか一つに決めきる必要もなく、65歳まで雇用を続けながら社外の一社と関わってみるという重ね方もできます。まずは自分の経験がどう扱われるのかを、実際の相手との話のなかで確かめてみるとよいでしょう。

よくあるご質問

定年後に経験を活かす仕事にはどんな選択肢がありますか。

契約の形で見ると4つに分かれます。今の会社で雇用を続ける、他社へ再就職する、資格を取って独立する、業務委託で顧問として企業と契約する、の4区分です。同業他社への転職や中小企業のアドバイザー職は2つ目、士業としての独立や研修講師は3つ目に含まれます。前の3つは会社の制度や採用条件、資格の枠組みのなかで役割が決まるのに対し、業務委託ではこれまでの経験と人脈がそのまま評価の対象になります。

定年後に再就職すると、どんな雇用形態になりますか。

内閣府の令和7年版高齢社会白書によると、役員を除く雇用者に占める非正規の職員・従業員の比率は、男性で55歳から59歳が10.3%、60歳から64歳が41.3%、65歳から69歳が67.8%です。厚生労働省の令和6年雇用動向調査でも、男性65歳以上の離職理由のうち契約期間の満了が38.9%を占めています(60歳から64歳では定年が35.1%)。期間の定めのある契約が広がる傾向があります。

定年後に向けて資格を取るのは有効ですか。

資格は専門性の裏づけとして有効ですが、仕事の入口とは別の工程だと捉えておくと計画が立てやすくなります。中小企業診断士活動状況アンケート調査では、コンサルティング業務を行っていない方の理由の最多が「機会がないから」(53.8%)で、依頼を受けたきっかけの1位は支援機関や協会からの紹介でした。報告書も、仕事の獲得には人的ネットワークの構築が重要だと結論づけています。

顧問として関わるには資格と実務経験のどちらが評価されますか。

特定の国家資格は求められず、重視されるのは実務経験と実績、そして役員や決裁者クラスとの人脈です。営業部門の出身かどうかも問われません。購買や経営、事業開発などで決裁に関わってきた経験は、相手企業のどの役職者にどう届けばよいかを見極める力として評価されます。

在職中から始めることはできますか。

できます。実務経験と人脈を棚卸しし、顧問を探す企業とつながる場にプロフィールを登録して、どんな声がかかるかを確かめてから判断できます。社外からどう評価されるかを知ってから決めるほうが、選択肢を狭めずに済みます。

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