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役員退任後の処遇と、顧問契約という選択肢

役員や執行役員の退任を控えている方、すでに退任された方に向けた記事です。自社の顧問や相談役という従来の受け皿がどう変わってきたのかを公開情報から整理し、他社と結ぶ社外の顧問契約という選択肢を、求められる理由と始め方まで解説します。

役員退任後の処遇にはどんな選択肢があるか

役員や執行役員の任期が満了したあと、会社との関わり方は大きく4つに分かれます。自社に顧問や相談役として残る、嘱託などの形で特定の業務を担当する、他社と顧問契約を結んで社外で関わる、そして会社との関係を完全に終える、という道筋です。どれを選ぶかで、その後に使える時間も、経験の生かし方も変わってきます。

選択肢位置づけ契約の形
自社の顧問・相談役経営陣への助言や対外的な活動を担う委任や業務委託が一般的
自社の嘱託など他の従業員と同じように特定の業務を担当する雇用契約
社外の顧問契約他社の課題に助言と実行の両面で関わる業務委託
会社を完全に離れる在任中の関係を区切る契約を結ばない
役員退任後の主な処遇と契約の形

自社に残る場合の契約の形は、担う内容によって分かれます。マネーフォワードの解説では、相談役は元経営陣がその経験や影響力を生かして経営者の相談に応じる立場であり、業務委託の形で契約することが多いと整理されています。一方、他の従業員と同じように特定の業務を担当するのであれば、雇用契約に基づく嘱託などの身分が選ばれます。役員としての経験を経営に生かしてほしいのか、実務を担ってほしいのかで、会社が用意する枠は変わるということです。

自社の顧問・相談役という受け皿は縮んでいます

かつては、役員を退任すれば自社の顧問や相談役に就くことが一つの慣行でした。ところが、この受け皿は近年はっきりと縮小しています。転機となったのが、東京証券取引所による開示の制度化です。BUSINESS LAWYERSの解説によれば、東証は2017年8月2日にコーポレート・ガバナンスに関する報告書の記載要領を改訂し、相談役・顧問等に関する記載欄を新設しました。2018年1月1日以後に提出する報告書から、氏名、役職や地位、業務内容、勤務形態や条件、報酬の有無、社長やCEOの退任日、相談役・顧問等の合計人数といった情報を記載する形が示されています。

開示が求められるようになると、大手企業では制度そのものを見直す動きが続きました。日本経済新聞によれば、パナソニックは2018年2月28日に相談役制度の廃止を発表し、当時の相談役であった中村邦夫元社長は4月1日付で特別顧問に就くことになりました。三菱重工業も2019年2月6日に相談役や特別顧問を廃止すると発表し、会長や社長の経験者が原則2年間だけ就ける非常勤かつ無報酬の名誉顧問を新設したうえで、2023年度に完全実施するとしています。

制度を残している企業でも、役割の説明を求められる度合いは強まりました。大和総研のコラムは、経済産業省が実施した企業アンケートの結果として、顧問や相談役の役割を把握していないと答えた企業が1割を超えていたこと、役員経験者から現経営陣への指示や指導が行われている割合が36%であったことなどを紹介しています。何をしている立場なのかを説明できることが、制度を維持する条件になってきたと言えます。

つまり、自社に残る道は、以前より席が限られ、役割もはっきり定義されるようになりました。退任後にこれまでの経験を存分に生かしたいのであれば、自社の枠だけを前提にせず、社外で結ぶ顧問契約まで視野に入れて考えるのが現実的です。

自社の顧問と社外の顧問契約はどう違うか

同じ顧問という呼び名でも、自社に残る顧問と、他社と結ぶ社外の顧問契約では、求められるものが異なります。自社の顧問は、その会社の歴史や内情を知っている前提で助言を求められます。社外の顧問契約では、相手企業の課題に対して、目に見える形で事業を前に進めることが期待されます。

観点自社の顧問・相談役社外の顧問契約
求められるもの自社の経緯と内情を踏まえた助言相手企業の課題に対する具体的な進展
契約の相手退任した自社の1社複数社と並行して結べる
役割の決まり方社内の慣行や規程に沿う一件ごとに契約で取り決める
報酬の決まり方社内の基準に沿う経験と担う役割の重さで決まる
自社の顧問・相談役と社外の顧問契約の違い

違いが最もはっきり出るのは、役割を誰が決めるかという点です。自社の顧問は、社内の規程や慣行の延長で役割が決まります。社外の顧問契約では、何をどこまで引き受けるのかを、相手企業と一件ごとに取り決めます。手間はかかりますが、自分の判断で関わる範囲を設計できるということでもあります。経営の意思決定に長く関わってきた方ほど、この裁量を歓迎する傾向があります。

退任した役員が社外で求められる理由

企業が社外の顧問に期待するのは、肩書きそのものではなく、自社だけでは届かない相手に届き、話を前に進める力です。新しい取引先を開拓したい企業にとって、決裁権を持つ役職者に会うまでの道のりが最も重い壁になります。役員として決裁の側に座っていた方であれば、その壁がどこにあり、どう越えるのかを実感として知っています。

  • 役員や決裁者クラスとの人脈と、その相手にどう話を通すかという勘所
  • 経営の数字と現場の両方を見てきた、事業全体を俯瞰する目線
  • 商談や交渉を最後まで進めてきた実務の経験
  • 部門を率い、人を動かしてきたマネジメントの蓄積

こうした資産は、営業部門の出身かどうかにかかわらず価値になります。購買や経営企画、事業開発、製造の現場で決裁に関わってきた経験は、相手企業がどの役職者にどう届けばよいかを見極める力に直結します。むしろ買い手の側に立っていた方は、企業が知りたい判断の基準をそのまま語れるという強みがあります。

社外の顧問契約の形態と報酬の考え方

社外の顧問契約は、企業に雇われるのではなく、独立した立場で業務を引き受ける業務委託の形をとります。継続して助言や支援を行う性質から、成果物の完成に責任を持つ請負ではなく、業務を適切に行うことに責任を持つ準委任に近い契約として説明されることが多くあります。役員として会社と委任の関係にあった方には、感覚としてなじみやすい形です。

  • 月額固定は、毎月一定額を受け取りながら継続して関わる形です。
  • 成果報酬は、商談の成立や契約の締結など、定めた成果が出たときに受け取る形です。
  • 時間単価は、稼働した時間や日数に応じて受け取る形です。

金額は、これまでの実務経験と人脈、そして担う役割の広さによって決まるため、幅が大きくなります。形態ごとの目安は関連記事の顧問の報酬相場で整理していますので、水準を確かめたい方はあわせてご覧ください。自社の顧問や相談役の報酬が社内の基準で決まるのとは、考え方そのものが異なります。

報酬と同じくらい大切なのが、業務範囲と期間の取り決めです。何を行い、何は含まないのか、契約はいつまでで更新はどうするのか。これらを先に言葉にしておくと、始めてからの食い違いを避けられます。契約書で確認したい項目は、関連記事の個人で顧問契約を結ぶにはで詳しく扱っています。

退任前後にしておく準備と始め方

社外の顧問として動き出すのに、特別な国家資格は求められません。重視されるのは、これまでの実務で積み上げた実績と人脈、そしてそれを相手の課題に結びつけて語れることです。退任の前後は、その棚卸しに時間を使える貴重な時期でもあります。

  1. 在任中に関わった案件と決裁の経験を書き出し、どんな課題を動かせるのかを言葉にする
  2. 人脈を業界や役職の層で整理し、どの相手にどう話を通せるのかを具体化する
  3. 退任時の取り決めを確認し、守秘や競業に関する誓約の内容を把握しておく
  4. 顧問を探す企業とつながる場にプロフィールを登録し、届いた相談と条件をすり合わせる

動き出す時期については、退任してから間を置きすぎない方が進めやすくなります。在任中の人脈や業界の状況は、時間の経過とともに更新が必要になるためです。一方で、退任の直後は引き継ぎや社内の整理が残っていることも多いので、まずは自分の経験の棚卸しから始め、条件が整ってから相手企業との話に進むという順番が現実的です。

顧問ダイレクトは、経験と人脈を持つ営業顧問と、営業を強化したい企業を直接つなぐマッチングサービスです。プロフィールを登録しておくと、条件に合う企業からオファーが届きます。退任後にどんな企業から求められるのかを、実際のオファーを通して確かめながら進められます。

社外の顧問契約が向いている方・向いていない方

社外の顧問契約は、退任した役員であれば誰にでも同じように向いているわけではありません。あらかじめ向き不向きを知っておくと、始めてからのずれを避けられます。

  • 過去の肩書きより、相手企業の課題そのものに関心を持って向き合える方に向いています。
  • 経営者と対等に議論し、自分の判断で次の一手を決めることを楽しめる方は、この立場で力を発揮できます。
  • 商談のために現場へ足を運び、成約まで見届けたい方は、企業が求める関わり方とかみ合います。
  • 業務範囲や報酬、期間を自分の言葉で取り決め、書面に残すことをいとわない方は、契約を安定して続けられます。

反対に、社内の指示系統のなかで役割が与えられることを前提にしている方は、業務委託という立場でかみ合いにくくなります。相手の状況を見て自分から動く主体性が問われるためです。過去の役職の大きさだけで価値を示そうとする姿勢や、条件を口約束のまま進める進め方も、この働き方では機能しにくいと言えます。

迷ったら、複数社との契約をいきなり目指さず、まず1社と深く関わって手応えを確かめるところから始めるとよいでしょう。そこで信頼を積み重ねれば、次の依頼や紹介につながっていきます。

よくあるご質問

役員を退任して他社の顧問になるとき、競業避止義務は関係しますか。

会社法上の競業避止義務は在任中の取締役に課されるもので、退任後には及ばないと解説されています。ただし退任時に競業や秘密保持の誓約書を交わしている場合は、その特約の内容が問題になります。特約は原則として有効ですが、禁止される業務や期間、地域の範囲が合理性を欠き職業選択の自由を不当に侵害すると判断されれば無効となる余地があるとされています。実際の判断は事情によって変わるため、誓約書の内容を確認したうえで弁護士にご相談ください。

社外の顧問契約の報酬はどのくらいですか。

月額固定、成果報酬、時間単価といった形態があり、金額は実務経験と人脈、担う役割の広さによって幅が出ます。自社の顧問や相談役の報酬が社内の基準で決まるのとは考え方が異なります。形態ごとの目安は関連記事の顧問の報酬相場で整理しています。

退任からどれくらいで始めるのがよいですか。

在任中の人脈や業界の状況は時間とともに更新が必要になるため、間を置きすぎない方が進めやすくなります。一方で退任直後は引き継ぎが残っていることも多いので、まず経験と人脈の棚卸しから始め、条件が整ってから相手企業との話に進む順番が現実的です。

自社の顧問や相談役と、他社との顧問契約は両立できますか。

両立している方もいますが、自社との契約で兼業に関する定めや秘密保持の範囲がどうなっているかを先に確認する必要があります。相手企業が自社の取引先や競合にあたる場合は、双方に事前に伝えたうえで進めるのが安全です。判断に迷う内容であれば、契約書を確認して弁護士に相談してください。

自社に顧問や相談役として残る道は減っているのですか。

東京証券取引所が2017年8月2日に記載要領を改訂し、2018年1月1日以後に提出するコーポレート・ガバナンスに関する報告書で相談役・顧問等の情報を記載する欄が設けられました。これを受けて、パナソニックが2018年2月に相談役制度の廃止を、三菱重工業が2019年2月に相談役・特別顧問の廃止を発表するなど、大手企業では制度を見直す動きが続いています。制度を残す企業でも、役割を説明できることが条件になってきています。

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