会社の顧問とは?種類・仕事内容と顧問になるまでの流れ
会社の顧問という立場で働くことを考えている方に向けた記事です。会社の顧問とは法律上どのような存在で、どんな種類があり、実際に何をするのかを公開情報から整理します。誰がなっているのか、報酬と契約はどう決まるのか、始めるまでに何をすればよいのかまで解説します。

この記事で扱う顧問はどの顧問か
顧問という言葉は、まったく別のものを指して使われます。調べ始めた記事が自分の知りたい顧問の話とずれていた、ということが起きやすい言葉なので、先に交通整理をしておきます。
- 部活動の顧問は、学校で生徒の活動を受け持つ教員の役割を指します。
- 顧問弁護士や顧問税理士は、資格に基づく継続的な相談対応を内容とする士業の契約です。
- 投資顧問は、投資の助言を業として行う事業者の呼び方です。
- 会社の顧問は、企業が経営や事業の課題に対して、専門知識と経験を借りるために置く立場です。
この記事が扱うのは4つ目の、企業の経営や事業を支援する顧問です。以降は顧問という言葉をこの意味で使います。ほかの意味を調べていた方は、ここで別の記事に移っていただくのが早いと思います。
会社の顧問とは何か
会社の顧問とは、企業から依頼を受けて、専門的な知識や経験をもとに補佐や指導にあたる立場です。人事の用語解説では、アドバイザーやブレーンとも呼ばれ、意思決定の権限は持たないと整理されています。企業から相談を受けて意見を述べる役割であり、議決権もなく、経営の責任を直接負うこともありません。
法律上の位置づけもはっきりしています。顧問は会社法に定められた役職ではありません。会社法が役員として定めているのは取締役、会計参与、監査役の3つで、顧問はそこに含まれないため、役員に課される法的な責任や義務からは一般に離れた立場になります。顧問を置くかどうかも、待遇や権限をどう決めるかも、企業が任意に定められます。
法律に定めがないということは、役割が契約で決まるということです。何を引き受け、何は引き受けないのかを、企業と一件ごとに取り決めます。裏を返せば、自分の経験を活かせる範囲を自分で設計できる立場でもあります。長く意思決定に関わってきた方ほど、この裁量を歓迎する傾向があります。
会社の顧問の種類
顧問は2つの軸で整理すると分かりやすくなります。どこから来た人かという軸と、どの領域を担うかという軸です。公開されている解説では、前者が内部顧問と外部顧問、後者が経営顧問、技術顧問、販路開拓や営業支援の顧問といった形で分類されています。
内部顧問と外部顧問
内部顧問は、その会社に長く勤めた元役員や元社員が就くものです。社内の事情や経緯に通じていることが強みになります。外部顧問は、会社の外から招かれる立場で、社内にはない知識や人脈を持ち込みます。これから顧問という働き方を考えている方が関わるのは、多くの場合この外部顧問です。
領域別に見た顧問の種類
| 種類 | 主に担う領域 | 求められる経験の例 |
|---|---|---|
| 経営顧問 | 経営戦略の立案と実行、組織や事業全体の課題 | 経営の意思決定に関わってきた経験 |
| 営業顧問 | 新規開拓や販路づくり、決裁者への到達 | 取引先や業界の役職者とのつながり |
| 技術顧問 | 技術的な課題への対応、技術者への指導 | 特定分野の技術と開発の実務 |
| 人事・組織の顧問 | 採用や評価、組織づくり | 人事や組織運営を担ってきた経験 |
| 法務・税務の顧問 | 契約や税務の継続的な相談対応 | 弁護士や税理士などの資格 |
士業の顧問とは分けて考える
同じ顧問という呼び名でも、士業の顧問契約は性質が異なります。士業の顧問は資格に基づく業務が中心で、内容も相場もある程度定まっています。事業を支援する顧問は、その方が積み上げてきた実務経験と人脈が価値の源泉であり、担う役割も報酬も一件ごとに変わります。士業の顧問料の感覚をそのまま当てはめると、水準の見当がずれます。
| 観点 | 士業の顧問(弁護士・税理士など) | 事業を支援する顧問 |
|---|---|---|
| 価値の源泉 | 資格に基づく専門知識 | 実務経験と人脈 |
| 業務の範囲 | 契約や税務など定まった領域 | 企業の課題に応じて一件ごとに決める |
| 資格の要否 | 資格が前提 | 資格は前提にならない |
| 報酬の決まり方 | 業務量に応じて比較的定まっている | 経験と担う役割の重さで大きく変わる |
会社の顧問は実際に何をするのか
企業が顧問に求めるのは、助言にとどまらず、事業が前に進むところまで関わることです。とくに営業や販路の領域では、次のような一連の流れに顧問が入ります。
- 相手の見極め。狙うべき企業のどの役員や部署、担当者に話を持っていくべきかを、自分の経験と人脈から判断します。
- ご紹介。見極めた相手に、自分のつながりを通じて話をつなぎます。共通の知人を介した話は、いきなりの問い合わせより聞いてもらいやすい状態から始まります。
- 商談への同席。相手の関心や懸念を読みながら、企業の担当者と一緒に提案を組み立てます。
- 成約までの伴走。商談後の振り返りや次の一手の相談まで加わり、契約が決まるところまで関わります。
経営顧問であれば、経営会議に加わって事業計画に意見を述べ、組織の再編や新規事業の立ち上げに伴走します。技術顧問であれば、開発の方針に助言し、社内の技術者を育てる役目も担います。どの領域でも、外から意見を伝えて終わりにするのではなく、企業の中の人と一緒に手を動かす関わり方が期待されます。
誰が会社の顧問になっているのか
顧問に就く方の経歴はさまざまですが、共通しているのは、決裁に関わる立場で長く実務を担ってきたことです。人事の用語解説では、取締役や監査役の退任者、元社長といった経営層の経験者が顧問に就くと整理されています。外部から招かれる場合は、他社で役員や事業部長を務めた方、特定分野の専門家などが中心です。
- 役員や事業部長として、決裁の側に座ってきた経験
- 取引先や業界の役職者とのつながりと、その相手にどう話を通すかという勘所
- 経営の数字と現場の両方を見てきた、事業全体を見渡す目線
- 部門を率い、人を動かしてきたマネジメントの蓄積
出身部門は営業に限りません。購買や経営企画、事業開発、製造の現場で意思決定に関わってきた経験は、相手企業がどの役職者にどう届けばよいかを見極める力に直結します。買い手の側に座っていた方であれば、企業が知りたい判断の基準をそのまま語れるという強みがあります。
なお、自社に残る内部顧問という受け皿は、以前より席が限られてきました。東京証券取引所は2017年8月2日にコーポレート・ガバナンスに関する報告書の記載要領を改訂し、2018年1月1日以後に提出する報告書から、相談役・顧問等の氏名、役職や地位、業務内容、勤務形態や条件、報酬などを記載する欄を新設しています。大和総研のコラムは、経済産業省の企業アンケートで、顧問や相談役が実際に果たしている役割を把握していないと答えた企業が1割を超えていたことを紹介しています。役割を説明できることが、制度を維持する条件になってきたということです。そのぶん、経験と人脈を外部顧問として社外で活かす道が、現実的な選択肢になっています。
報酬と契約の基本
事業を支援する顧問は、企業に雇われるのではなく、独立した立場で業務を引き受ける業務委託契約を結ぶのが一般的です。民法の分類でいえば、成果物の完成に責任を持つ請負ではなく、法律行為以外の事務を委託する準委任にあたる契約として説明されることが多くあります。指揮命令を受けて働く形になると雇用と評価されるため、進め方の自由度は契約の性質にも関わります。
報酬は、月額固定、成果報酬、時間単価という3つの形が基本です。公開情報では、定額の顧問契約で月20万円から50万円程度、時間契約で1日3万円から10万円程度、成果報酬で利益の10%から30%程度といった目安が紹介されています。経営顧問の月額は数万円から数十万円と幅があり、担う役割の重さで大きく変わります。形態ごとの詳しい目安は関連記事の顧問の報酬相場で、契約書で確認したい項目は個人で顧問契約を結ぶにはで整理していますので、あわせてご覧ください。
会社の顧問になるまでの流れ
事業を支援する顧問になるのに、国家資格は求められません。重視されるのは、これまでの実務で積み上げた実績と人脈、そしてそれを相手企業の課題に結びつけて語れることです。進め方はおおむね次のようになります。
- これまでに関わった案件と決裁の経験を書き出し、どんな課題を動かせるのかを言葉にする
- 人脈を業界と役職の層で整理し、どの相手にどう話を通せるのかを具体化する
- 在籍中の兼業規程や退任時の取り決めを確認し、守秘や競業に関する定めを把握しておく
- 顧問を探す企業とつながる場にプロフィールを登録し、届いた相談と条件をすり合わせる
- 業務の範囲、報酬、期間、更新の条件を書面にしたうえで契約を結ぶ
顧問ダイレクトは、経験と人脈を持つ営業顧問と、営業を強化したい企業を直接つなぐマッチングサービスです。プロフィールを登録しておくと、条件に合う企業からオファーが届きます。どんな企業から求められるのかを、実際のオファーを通して確かめながら進められます。
会社の顧問が向いている方・向いていない方
顧問という立場は、経営層の経験があれば誰にでも同じように向いているわけではありません。あらかじめ向き不向きを知っておくと、始めてからのずれを避けられます。
- 過去の肩書きより、相手企業の課題そのものに関心を持って向き合える方に向いています。
- 経営者と対等に議論し、自分の判断で次の一手を決めることを楽しめる方は、この立場で力を発揮できます。
- 商談や現場に足を運び、成約まで見届けたい方は、企業が求める関わり方とかみ合います。
- 業務の範囲や報酬、期間を自分の言葉で取り決め、書面に残すことをいとわない方は、契約を安定して続けられます。
反対に、社内の指示系統のなかで役割が与えられることを前提にしている方は、業務委託という立場でかみ合いにくくなります。相手の状況を見て自分から動く主体性が問われるためです。過去の役職の大きさだけで価値を示そうとする姿勢や、条件を口約束のまま進める進め方も、この働き方では機能しにくいと言えます。迷ったら、いきなり複数社を目指さず、まず1社と深く関わって手応えを確かめるところから始めるとよいでしょう。
出典
- 顧問とは?役員や相談役との違い・役割・具体例・契約のメリット・選び方などを分かりやすく解説(契約ウォッチ)
- 顧問とは?意味や種類および委託するメリットを解説(マネーフォワード クラウド給与)
- 顧問とは?【意味・役割をわかりやすく】相談役との違い(カオナビ人事用語集)
- 顧問とは?報酬相場や役割、どんな仕事なのかをわかりやすく解説(あしたの人事オンライン)
- 顧問契約とは?職種別の報酬相場や注意点まとめ(創業手帳)
- 会社法(第329条/e-Gov法令検索)
- 相談役・顧問等の開示に関する「コーポレート・ガバナンスに関する報告書」記載要領の改訂について(BUSINESS LAWYERS)
- 顧問、相談役とコーポレートガバナンス(大和総研)
よくあるご質問
顧問と相談役はどう違いますか。
公開されている解説では、相談役はその企業の元役員や長年勤めた幹部が就くことが多く、会社の歴史や内部の事情に通じた立場から経営者の相談に応じる役割と整理されています。顧問は社外の専門家が招かれる場合も含み、専門知識や人脈を持ち込んで特定の領域を支援します。どちらも会社法に定めのない任意の立場で、意思決定の権限は持ちません。
会社の顧問になるのに資格は必要ですか。
事業を支援する顧問に、国家資格は求められません。重視されるのは実務で積み上げた実績と人脈、そしてそれを相手企業の課題に結びつけて語れることです。ただし顧問弁護士や顧問税理士のように資格に基づく業務を担う士業の顧問は別で、それぞれの資格が前提になります。
何歳から会社の顧問になれますか。
年齢の決まりはありません。実際には、役員や事業部長として決裁に関わってきた経験が求められるため、40代後半から60代以降の方が中心です。定年や役職定年を迎えた方だけでなく、在職中に他社の顧問を兼ねる方もいます。年齢よりも、どんな課題を動かせるかを説明できるかどうかで決まります。
複数の会社の顧問を兼ねられますか。
業務委託契約であれば、複数社と並行して契約を結ぶことができます。ただし、在籍している会社の兼業規程や、過去に交わした守秘義務や競業に関する取り決めの範囲は先に確認が必要です。契約先どうしが競合にあたる場合は、双方に事前に伝えたうえで進めるのが安全です。判断に迷う内容であれば、契約書を確認して弁護士にご相談ください。
会社の顧問の報酬はどのくらいですか。
月額固定、成果報酬、時間単価という形があり、公開情報では定額の顧問契約で月20万円から50万円程度、時間契約で1日3万円から10万円程度、成果報酬で利益の10%から30%程度といった目安が紹介されています。金額は経験と担う役割の重さで大きく変わります。形態ごとの詳しい目安は関連記事の顧問の報酬相場で整理しています。
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